雅工房 『 日々これ好日 』

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大切なもの ・ 小さな小さな物語 ( 500 )

「私たちにとって大切なものとは何でしょうか?」
このような問い掛けは、とても抽象的で答える人の焦点はずいぶん範囲が広がってしまいます。
それでは、「私たちが生存していく上で大切なものは何でしょうか?」ということになりますと、少し様子が変わってきます。
それでも、単なる生物としての生存に絶対的に必要な要素と、人間として生きていく上に必要なものとは、少しニュアンスが変わってきます。

私たちが日常生活を送って行く上で、必要とするものは数え切れないほどたくさんあります。
しかし、ぎりぎり生きていく上で必要なものに限定していけば、ある程度点数は減らせるかもしれません。
例えば、空気とか水といったものは絶対必要なものの部類に入ります。かつては「衣・食・住」という言葉があったように、これらも私たちが生活する上での必需品とされていました。しかし、単に生存することだけに絞れば、「衣と住」はなくても何とかなりますが、「食」はそうはいきません。
実は、ここしばらく私たちは、このどうしても生存に必要なものというものを、それほど重要視してこなかったように思うのです。

昨今は、大陸からの黄砂や汚染物質の飛来や、わが国の放射性物質の拡散などで、大気の汚染に強い関心が寄せられています。わが国も工業化が進められる中で大気汚染が大きな問題になりましたのは、それほど遠い昔のことではなく、現在でも各地で問題が発生しています。
水や食物に関しても、水俣病の悲劇に代表されるように各地でいくつもの深刻な被害をもたらしてきました。鉱山などの被害は、かなり古い時代に一部で認識されていたようですが、社会問題化してきたのはそれほど昔のことではありません。

「空気のような存在」などという表現の仕方があります。
居るのか居ないのかよく分からない、といった存在感の薄さを示すことが多いようですが、それでいて大切な存在だという意味に使われることもよくあります。
私たちは、ぎりぎり生存していくために必要なものは、空気のように自然に与えられるものと考えてきたように思われます。しかし、今それらが各地で蝕まれつつあるのです。それらの汚染や劣化は、我々が気がついた時には相当進行しており、問題視し始めた時には相当ひどい状態に陥っていて、回復させることは容易ではないのです。
それでも水や空気は自然現象で若干の浄化や移動が可能ですが、食物となれば、そうそう簡単ではありません。わが国では「食の安全」ということが食物に対する課題ですが、地球規模で考えれば、絶対量の不足が深刻な問題なのです。
私たちが生活していくためには、水や空気や衣食住ばかりでなく、さまざまなものが必要になってきます。そして、ややもすると、もっとも基本的なものではなく、客観的に考えれば付随的と思えるものに重要性を感じているきらいがあります。
しかし、私たちは、私たちが生存していく上で不可欠なものが、汚染し、劣化してきていることにも心を配る必要があるのではないでしょうか。

( 2013.04.07 )