2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧
枕草子 第百九段 卯月の晦がたに 卯月の晦がたに、泊瀬に詣でて、「淀の渡り」といふものをせしかば、船に車を舁(カ)き据ゑていくに、菖蒲・菰などの、末短く見えしを取らせたれば、いと長かりけり。 菰積みたる船のありくこそ、いみじうをかしかりしか。 …
枕草子 第百十段 常よりことにきこゆるもの 常よりことにきこゆるもの。 正月の車の音、また、鶏の声。 暁の咳き、物の音はさらなり。 ふだんより特別な感じに聞こえるもの。 元日の車の音、また、にわとりの声。 暁のせきばらい、暁の音色は言うまでもあり…
枕草子 ちょっと一息 時代の流れ 清少納言が生まれたのは、西暦でいえば、965年と考えられています。没年ははっきりしていませんが、60歳頃の死去と考えられています。 ざっと言いますと、西暦1000年の前後を生きた女性ということになります。つま…
枕草子 第百十一段 絵に描き劣りするもの 絵に、描き劣りするもの。 瞿麦、菖蒲、桜。 物語に、「めでたし」といひたる、男・女の容貌。 絵に描くと、実物より見劣りするもの。 なでしこ、しょうぶ、さくら。 物語のなかで、「すばらしい」と述べられている…
枕草子 第百十二段 描きまさりするもの 描きまさりするもの。 松の木、秋の野。 山里、山道。 絵に描いて実物よりまさって見えるもの。 松の木、秋の野。 山里、山道。 前段と対をなしています。 前段には書き出しの部分に、「絵に」とありますが、この章段…
枕草子 第百十三段 冬はいみじう寒き 冬は、いみじう寒き。 夏は、世に知らず暑き。 冬は、うんと寒いのがよろしい。 夏は、たまらないほど暑いのがいいのですよ。 短く、極めて率直な文章です。 「それが、どうしたんですか」と言いたい気持ちもありますが…
枕草子 第百十四段 あはれなるもの あはれなるもの。 孝ある人の子。 よき男の若きが、御嶽精進したる。閉て隔てゐて、うち行ひたる暁の額、いみじうあはれなり。むつまじき人などの、目覚ましてきくらむ、思ひやる。 「詣づるほどのありさま、いかならむ」…
枕草子 第百十五段 寺に籠りたるは 正月に寺に籠りたるは、いみじう寒く、雪がちに凍りたるこそ、をかしけれ。雨うち降りぬる気色なるは、いとわるし。 清水などに詣でて、局するほどに、呉橋のもとに車引き寄せて立てたるに、覆肩衣ばかりうちしたる若き法…
(その1からの続き) 日が暮れる頃になって参詣するのは、これからお籠りする人のようです。 小坊主たちが、とても持ち運びできそうもない鬼屏風の丈の高いのを、ほんとうに上手に前うしろに動かして、畳など置いたかと思うと、次々と仕切っていって、犬防…
枕草子 第百十六段 心づきなきもの いみじう心づきなきもの。 祭り・禊など、すべて男の物見るに、ただひとり乗りて、みるこそあれ。いかなる心にかあらむ。やむごとなからずとも、若き郎等などの、ゆかしかるをも、ひき乗せよかし。 透影に、ただ一人ただよ…
枕草子 第百十七段 わびしげに見ゆるもの わびしげに見ゆるもの。 六、七月の、午・未の刻ばかりに、汚なげなる車に、えせ牛かけて、ゆるがしいく者。 雨降らぬ日、張筵したる車。 いと寒きをり、暑きほどなどに、下種女のなり悪しきが、子負ひたる。 老いた…
枕草子 第百十八段 暑げなるもの 暑げなるもの。 随身の長の狩衣。 衲の袈裟。 出居の少将。 いみじう肥えたる人の、髪多かる。 六、七月の修法の、日中の時おこなふ阿闍梨。 暑苦しそうなもの。 随身の長の狩衣。 衲(ノウ・種々の布を厚く縫い綴って作った…
枕草子 第百十九段 恥づかしきもの 恥づかしきもの。 男の心のうち。 睡ざとき夜居の僧。 みそか盗人の、さるべき隈にゐて見るらむを、誰かは知らむ。暗きまぎれに、忍びて物ひき取る人もあらむかし。そはしも、同じ心に「をかし」とや思ふらむ。 (以下割愛…
枕草子 第百二十段 無徳なるもの 無徳なるもの。 潮干の潟にをる大船。 大きなる木の、風に吹き倒されて、根をささげて、横たはれ臥せる。 えせ者の、従者勘へたる。 人の妻などの、すずろなるもの怨じなどして、隠れたらむを、「必ず、尋ね騒がむものぞ」と…
枕草子 ちょっと一息 枕草子の楽しさ 現在私たちが、「枕草子」として目にしているものは、残念ながら清少納言が書き綴った原文ではありません。 当時、清少納言が書き上げていったものは、宮中で大人気となり、多くの貴族や皇族、文化人や女房たちに読まれ…
枕草子 第百二十一段 修法は奈良方 修法は、 奈良方。仏の護身どもなど読みたてまつりたる、なまめかしう、尊し。 加持祈祷は、 奈良の系統。仏の護身法の真言などを次々にお読みになられているのは、優雅で尊いものです。 この時代、人々と神仏との距離は近…
枕草子 第百二十二段 はしたなきもの はしたなきもの。 こと人を呼ぶに、「わがぞ」とさし出でたる。物など取らするをりは、いとど。 おのづから人のうへなどうちいひ譏りたるに、幼き子どものきき取りて、その人のあるに、いひ出でたる。 (以下割愛) 中途…
枕草子 第百二十三段 関白殿黒戸より出でさせたまふ 関白殿、黒戸より出でさせたまふとて、女房の、ひまなくさぶらふを、 「あな、いみじのおもとたちや。翁を、いかに笑ひたまふらむ」 とて、分け出でさせたまへば、戸口近き人々、いろいろの袖口して、御簾…
枕草子 第百二十四段 夜一夜降り明かし 九月ばかり、夜一夜降り明かしつる雨の、今朝はやみて、朝日いとけざやかに射し出でたるに、前栽の露は、滾(コボ)るばかり濡れかかりたるも、いとをかし。 透垣の羅文・軒の上などは、掻いたる蜘蛛の巣の滾れ残りた…
枕草子 第百二十五段 七日の日の若菜を 七日の日の若菜を、六日、人の持て来騒ぎ、とり散らしなどするに、見も知らぬ草を、子どもの取り持て来たるを、 「何とか、これをばいふ」と問へば、とみにはいはず、 「いさ」など、これかれ見あはせて、 「『耳無草…
枕草子 第百二十六段 官の司に 二月、官の司に、定考といふことすなる。なにごとにかあらむ、孔子(クジ)など掛けたてまつりて、することなるべし。聡明とて、主上にも宮にも、あやしきもののかたなど、土器(カワラケ)に盛りて進(マイ)らす。 頭弁の御…
枕草子 第百二十七段 六位の笏 「などて、官(ツカサ)得はじめたる六位の笏に、職の御曹司の辰巳の隅の築土(ツイヒヂ)の板はせしぞ。さらば、西・東のをもせよかし」 など言ふことをいひ出でて、あぢきなき事どもを、 「衣などに、すずろなる名どもを付け…
枕草子 第百二十八段 故殿の御為に 故殿の御為に、月毎の十日、経・仏など供養させたまひしを、九月十日、職の御曹司にてせさせたまふ。上達部・殿上人いと多かり。 清範、講師にて、説く言はたいと悲しければ、殊にもののあはれ深かるまじき若き人々、みな…
枕草子 第百二十九段 頭弁の職にまゐりたまひて 頭弁の、職にまゐりたまひて、物語などしたまひしに、夜いたう更けぬ。 「明日、御物忌なるに籠るべければ、丑になりなば、あしかりなむ」 とて、まゐりたまひぬ。 早朝、蔵人所の紙屋紙ひき重ねて、 「今日は…
枕草子 第百三十段 五月ばかり月もなう 五月ばかり、月もなう、いと暗きに、 「女房やさぶらひたまふ」 と、声々していへば、 「出でて見よ。例ならずいふは、誰ぞとよ」 と仰せらるれば、 「こは誰ぞ。いとおどろおどろしう、きはやかなるは」 といふ。もの…
枕草子 ちょっと一息 清少納言のお人柄 清少納言というお方は、どのような女性であったのか。 多くの研究者の方々が、いろいろな資料をもとに清少納言のお人柄を探ろうと研究してきています。そして、ある程度は、清少納言像というものが形作られてきている…
枕草子 第百三十一段 円融院の御終ての年 円融院の御終ての年、みな人、御服脱ぎなどして、あはれなることを、公けよりはじめて、院の御事など思ひ出づるに、雨のいたう降る日、藤三位の局に、蓑虫のやうなる童の大きなるが、白き木に立て文をつけて、 「こ…
枕草子 第百三十二段 つれづれなるもの つれづれなるもの。 所去りたる物忌。 馬下りぬ双六。 除目に官(ツカサ)得ぬ人の家。雨うち降りたるは、まいて、いみじうつれづれなり。 つれづれなるもの。 自宅から離れた場所での物忌。 駒が進まない双六。 除目…
枕草子 第百三十三段 つれづれなぐさむもの つれづれなぐさむもの。 碁・双六。 物語。 三つ四つの稚児の、ものをかしういふ。また、いと小さき稚児の、物語りし、「誰が家(タガヘ)」などいふわざしたる。 菓子(クダモノ)。 男などの、うちさるがひ、も…
枕草子 第百三十四段 取りどころなきもの 取りどころなきもの。 容貌憎さげに、心悪しき人。 御衣糄𥻨(ミゾヒメ・粥を水に浸して洗濯糊にしたもの)の、ふりたる。 これ、「いみじう万づの人の憎むなるもの」とて、いまとどむべきにあらず。また、「後火の…