2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧
枕草子 第二百四十八段 いみじう仕立てて いみじう仕立てて壻どりたるに、ほどもなく住まぬ壻の、舅に会ひたる、「いとほし」とや思ふらむ。 ある人の、いみじう時にあひたる人の壻になりて、ただ一月ばかりもはかばかしう来で、やみにしかば、すべていみじ…
枕草子 第二百四十九段 世の中に 世の中に、なほいと心憂きものは、人に憎まれむことこそあるべけれ。 誰てふもの狂ひか、われ「人にさ思はれむ」とは思はむ。されど、自然に、宮仕え所にも、親・同胞のうちにても、想はるる・想はれぬがあるぞ、いとわびし…
枕草子 第二百五十段 男こそなほいとありがたく 男こそ、なほいとありがたく、あやしき心ちしたるものはあれ。 いと清げなる人を捨てて、憎げなる人を持たるもあやしかし。 公けどころに入り立ちたる男・家の子などは、あるが中によからむをこそは、選りて想…
枕草子 ちょっと一息 清少納言の性格 少納言さまは、どのような性格の持ち主であったのか? とても興味があります。 古来、様々な文人や学者などが推察されているようですが、どうも、「女性らしく、たおやか」といった評価は少ないようです。むしろその極端…
枕草子 第二百五十一段 万づのことよりも情あるこそ 万づのことよりも、情あるこそ、男はさらなり、女もめでたくおぼゆれ。 無(ナ)げの言葉なれど、切に心に深く入らねど、いとほしきことをば、「いとほし」とも、あはれなるをば、「げに、いかに思ふらむ…
枕草子 第二百五十二段 人のうえいふを 人のうえいふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ。 いかでか、いはではあらむ。わが身をばさし措きて、さばかりもどかしくいはまほしきものやはある。 されど、けしからぬやうにもあり。また、おのづからききつけて、恨み…
枕草子 第二百五十三段 人の顔 人の顔に、「とりわきてよし」と見ゆるところは、たび毎に見れども、「あなをかし」「めづらし」とこそおぼゆれ。 絵など、あまたたび見れば、目も立たずかし。近う立てたる屏風の絵などは、いとめでたけれども、見も入れられ…
枕草子 第二百五十四段 古体の人 古体の人の、指貫着たるこそ、いと怠々(タイダイ)しけれ。 前にひき当てて、まづ裾をみな籠め入れて、腰はうち捨てて、衣の前を整へ果てて、腰をおよびて取るほどに、うしろざまに手をさしやりて、猿の手結はれたるやうに…
枕草子 第二百五十五段 十月十余日の 十月十余日の、月のいと明かきに、「歩きて見む」とて、女房十五、六人ばかり、みな濃き衣を上に着て、ひきかへしつつありしに、中納言の君の、紅の張りたるを着て、領より髪をかき越したまへりしが、あたらし、卒塔婆に…
枕草子 第二百五十六段 成信の中将 成信の中将こそ、人の声は、いみじうようきき知りたまひしか。 同じ所の人の声などは、常にきかぬ人は、さらに得きき分かず。殊に男は、人の声をも手をも、見分ききき分かぬものを、いみじうみそかなるも、かしこうきき分…
枕草子 第二百五十七段 大蔵卿ばかり耳敏き人はなし 大蔵卿ばかり、耳敏き人はなし。まことに、蚊の睫の落つるをも、ききつけたまひつべうこそありしか。 職の御曹司の西面に住みしころ、大殿の新中将、宿直にて、ものなどいひしに、そばにある人の、 「この…
枕草子 第二百五十八段 嬉しきもの 嬉しきもの。 まだ見ぬ物語の、一を見て、「いみじうゆかし」とのみ思ふが残り、見出でたる。さて、心劣りするやうもありかし。 人の破り棄てたる文を継ぎて見るに、おなじ続きを、あまた行(クダリ)見続けたる。 「いか…
枕草子 第二百五十九段 御前にて 御前にて、人々とも、またもの仰せらるるついでなどにも、 「世の中の腹立たしう、むつかしう、片時あるべき心ちもせで、『ただ、いづちもいづちもいきもしなばや』と思ふに、ただの紙のいと白う清げなるに良き筆、白き色紙…
枕草子 第二百六十段 関白殿二月廿一日に ・ その1 関白殿、二月廿一日に、法興院の積善寺といふ御堂にて、一切経供養せさせたまふに、女院もおはしますべければ、二月朔のほどに、二条の宮へ出でさせたまふ。 ねぶたくなりにしかば、何ごとも見入れず。 つ…
(その1からの続き) さて、八日、九日の頃、私が里に下がるのを、中宮さまは、 「もう少し、当日近くになってからにしてはどうか」 と、仰せになられましたが、私は退出してしまいました。 たいそう、いつもよりのどかな日差しが差している昼ごろ、中宮さ…
(その2からの続き) 積善寺にお着きになられましたところが、大門のそばで、高麗や唐土の音楽を奏して、獅子や狛犬が踊り舞い、乱声(ランジヤウ・笛、鉦、太鼓などの合奏)の音や鼓の声に、何が何だか分からなくなってしまいます。「これは、生きたままで…
枕草子 ちょっと一息 栄枯盛衰の渦中で 前回の第二百六十段は、枕草子の中で最大級の長編でした。 清少納言が、中宮定子のもとに出仕して間もない頃の、栄華の絶頂期が描かれています。 同時に、この文章が書かれたのは、ずっと後のことで、かつての繁栄の時…
枕草子 第二百六十一段 尊き言 尊き言、 九条の錫杖(サクヂャウ)。 念仏の回向。 尊き言葉は、 九条の錫杖の経文。 念仏の回向文。 錫杖というのは、僧や修験者が持ち歩く頭部に金属の輪などが付いている杖のことですが、この章段は「尊き言」となっていま…
枕草子 第二百六十二段 歌は風俗 歌は、 風俗(フゾク)。中にも、杉立てる門(カド)。 神楽歌も、をかし。 今様歌は、長うて曲(クセ)づいたり。 歌謡は、 風俗歌。中でも、「杉立てる門」がいい。 神楽歌も、おもしろい。 今様歌は、長くて小節がきいて…
枕草子 第二百六十三段 指貫は紫の濃き 指貫は、 紫の濃き。 萌黄。 夏は、二藍。 いと暑きころ、夏虫の色したるも、涼しげなり。 指貫(サシヌキ・袴の一種で裾を紐で結ぶ)は、 紫の濃い色のものが良い。 萌黄色も。 夏は、二藍が良い。 大変暑い頃は、夏…
枕草子 第二百六十四段 狩衣は香染の淡き 狩衣は、 香染の淡き。 白き袱紗。 赤色。 松の葉色。青葉。 桜。柳。また、青き藤。 男は、何の色の衣をも着たれ。 狩衣は、 香染の薄い色のものが良い。 白い袱紗(フクサ・表・裏とも白絹)も。 赤色(表が赤・裏…
枕草子 第二百六十五段 単衣は白き 単衣は、 白き。 日の装束の、紅の単の衵など、かりそめに着たるはよし。されどなほ、白きを。 黄ばみたる単衣など着たる人は、いみじう心づきなし。 練色の衣どもなど着たれど、なほ、単衣は白うてこそ。 単衣は、 白い色…
枕草子 第二百六十六段 下襲は 下襲(シタガサネ)は、 冬は、躑躅、桜、掻練襲、蘇枋襲。 夏は、二藍、白襲。 下襲は、 冬は、つつじ、さくら、かいねりがさね、すおうがさね。 夏は、ふたあゐ、しらがさね。 下襲とは、束帯の時に袍の下に着た着物で、背後…
枕草子 第二百六十七段 扇の骨は 扇の骨は、 朴。 色は、 赤き、紫、緑。 扇の骨は、 朴の木。 張る紙の色は、 赤、紫、緑。 ここでの扇は、夏に納涼のために用いる扇のことで、蝙蝠(カワホリ)の扇と呼ばれました。 ここに挙げられているものは、おそらく…
枕草子 第二百六十八段 檜扇は 檜扇(ヒアフギ)は、 無文。 唐絵。 檜扇は、 無文(白木のままで無地のもの)。 唐絵。 檜扇は、扇としての実用性はなく、純然たる装身具です。 檜の薄い板を綴って作りますが、辞書などによりますと、位によってその板の数に…
運命紀行 道長の娘平安王朝の長きにわたって政権を担った藤原氏の絶頂期を築いた人物となれば、やはり藤原道長ということになるのではないか。もちろん、それに先立つ人たちの敷いた路線があってこその道長の誕生ではあるが、やはり、道長が詠んだとされる『…
枕草子 第二百六十九段 神は松尾 神は、 松尾。 八幡。この国の帝にておはしましけむこそ、めでたけれ。行幸などに、葱の花の御輿にたてまつるなど、いとめでたし。 大原野。 春日。いとめでたくおはします。 平野は、いたづら屋のありしを、「何するところ…
枕草子 第二百七十段 崎は唐崎 崎は、 唐崎。 三穂が崎。 崎は、 唐崎(近江)。 三穂が崎(出雲)。 ともに古歌や故事に縁があること、また、唐崎には日吉大社があり三穂が崎には美保神社があることから、前段からの類想とも考えられます。 ただ、この二つ…
枕草子 ちょっと一息 千年の時を超えて ここ十段ほどは「何々は」の中でも、ごく簡単な内容の章段が続いています。 枕草子の特徴や謎の要因として、全体としての内容の調和のようなものが図られていないこと、それぞれの章段の長さがあまりにも違い過ぎるこ…
枕草子 第二百七十一段 屋は丸屋 屋は、丸屋。東屋。 屋根は、まるや。あづまや。 丸屋とは、屋根の棟木を置かないで、萱や葦などで丸く葺いたもので、粗末な小屋などに用いられた。 東屋とは、やはり棟木は使わず、四方に軒を葺きおろした柱だけの小さな建…