2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧
ずいぶんと遠い日のことである。 今思い返してみると、あれは本当にあったことなのかどうか、若干心もとない部分がある。 記憶に齟齬があるとは思わないが、何分若い頃の体験であり、伝えられたことが本当に事実であったのか、あるいは、自分の精神状態が高…
( 1 - 2 ) 信州は雪深い所ですが、この辺りは特別雪が少ないのですよ、と彼の母親は私に向かって話し始めた。 私はこの友人の母親を、友人が呼ぶのと同じように「お母さん」と呼ぶようになっていたが、そう呼びたくなるような実に暖かなものを感じさせ…
( 2 - 1 ) 翌朝、友人宅を七時に出発した。 旅行中の天候は悪天候が予想されていたが、出発する時はまだ晴れていた。 私は大きなリュックサックを背負っていた。 リュックサックの中には、お母さんの作ってくれた弁当も入っていた。他には、毛布と着替…
( 2 - 2 ) 私の選択は正しかったようだ。 バスの発車時間を待っている間に空全体が真っ暗になり、雨脚は激しいものになっていった。 湖岸のハウスの中は、バス待ちと雨宿りが目的の客であふれそうになっていった。最寄りの国鉄の駅に向かうバスが到着す…
( 2 - 3 ) 「あーあ・・・」 とんでもない「ランプの出湯」に、私はため息のようなものをつきながら電灯をつけた。驚くほど部屋全体が明るくなった。 バスの中といい、この宿に入ってからも全体に照明が弱かったらしく、私の目がそれに慣れていたらしく…
( 3 - 1 ) 寝入って間もない時間に思えた。 私は、人の声で目が覚めた。寝不足で起こされたときの、あの気分の悪さが私の全身にあった。全身はまだ覚め切っておらず、しばらくの間は夢と現の区分がつかない状態でじっと身体を丸めていた。 意識が次第に…
( 3 - 2 ) 十一時頃、雨が小降りになった。 空も山も道も、何もかもがもやに包まれているような状態だったが、私は歩いてみることにした。山頂まで行くのは時間的に無理であるが、このまま一日中宿にいるのはかなりの苦痛であった。男が出発したあとは…
( 4 - 1 ) 私が宿に辿り着いたのは、夕方の五時を過ぎていた。 宿の主人は私が無事に帰りついたことを喜んでくれた。心配を懸けたことは申し訳なかったが、客とはいえ他人の私のために大げさに思えるほど喜んでくれる姿に少々戸惑っていた。 あと一時間…
( 4 - 2 ) その事件は、五年ほど前の夏に起こった。 ここからそれほど離れていない町で殺人事件が発生した。雑貨店を営んでいた六十歳の女性が殺害されたのである。 一人暮らしだった女性は夜中に侵入してきた犯人に襲われたらしく、寝ているところを絞…
さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・ あれは、十歳になったかどうかの頃のことだったと思う。 となり村の親戚の家まで用事に行かされた帰り道のこと、川の土手だと思うんだが、一面にきれいな花がいっぱいに咲いていた。 わたしは、用…
さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・ わたしは 引き潮の時に生まれた子なので、大きくなるまで育たないと 言われていたようだ。 わたしの家族は だいたい小柄な方だけれど、わたしは特に小さかったみたい。 そのことも 「引き潮に生ま…