2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧
今昔物語集 巻第一 全三十一巻、一千余の説話から成る今昔物語集は、本巻から始まります。 全体の中の位置付けとしては、「天竺の部」に属します。天竺の部は五巻からなっており、釈迦及びその弟子たちに因む説話から成っています。そのうち、巻第一は、釈迦…
釈迦人間界に宿る ・ 今昔物語 ( 巻1-1 ) 今は昔、 釈迦如来、未だ仏にお成りになっていない時は、釈迦菩薩と申されて兜率天(トソツテン・須弥山にあったとされる)の内院という所に住んでおられた。 やがて、閻浮提(エンブダイ・須弥山の南方洋上にあると…
釈迦誕生 (1) ・ 今昔物語 ( 巻1-2 ) 今は昔、 釈迦如来の御母麻耶夫人が、父の善覚長者(ゼンカクチョウジャ・小国の王らしい)と共に、春の始めの二月八日(四月八日説もある)、嵐毘尼園(ランビニエン)の無憂樹(ムウジュ)の下に行かれた。 夫人はその…
釈迦誕生 (2) ・今昔物語 ( 巻1-2 ) ( (1)より続く ) さて、太子ご誕生のその時、四天王(シテンノウ・帝釈天の麾下の神将で仏法を護るため四方に配される。東方は持国天・南方は増長天・西方は広目天・北方は多聞天の総称)は、天上の薄い絹布で太子を包…
釈迦の王宮時代 (1) ・ 今昔物語 ( 巻1-3 ) 今は昔、 浄飯王(ジョウボンオウ)の御子、悉達太子(シツダタイシ・のちの釈迦)が十七歳になられたので、父の大王は諸大臣を集めて共に相談して、「太子はすでに成人となった。すぐにも妃を迎えたい。そこで、…
釈迦の王宮時代 (2) ・ 今昔物語 ( 巻1-3 ) ( (1)より続く ) しばらく日を経て、太子は、王に前のように出かけて遊びたい旨申し出られた。 王はこれを聞いて、心配されて、「この前出掛けた時には、道で老人を見て憂いの心を抱き、楽しむことが出来なかっ…
釈迦の王宮時代 (3) ・ 今昔物語 ( 巻1-3 ) ( (2)より続く ) その様子を見て浄居天は、神通力を以って憂陀夷(ウダイ)の心を意識不明の状態にさせて答えさせた。「あれは、死人です」と。 太子は訊ねた。「どういう人を死人というのか」と。憂陀夷は答え…
釈迦 城を出る (1) ・ 今昔物語 ( 巻1-4 ) 今は昔、 浄飯王(ジョウボンオウ)の御子である悉達太子(シッダタイシ・釈迦)は、御年十九歳になられたが、心の内に深く出家すべきとの考えを抱いていて、父である王のもとに参られた。威儀を整えられた御姿は、…
釈迦 城を出る (2) ・ 今昔物語 ( 巻1-4 ) ( (1)より続く ) 馬の速さはまるで金翅鳥(コンジチョウ・伝説上の巨大な鳥で、後に仏教の護法神となる)の如くであった。シャノクも離れることなく御供を続けた。太子は、跋伽仙人(バカセンニン・釈迦出家後の最…
釈迦 苦行に入る (1) ・ 今昔物語 ( 巻1-5 ) 今は昔、 悉駄太子(シツダタイシ・釈迦)は、跋伽仙人が苦行している林の中において出家なされ、その仙人の住処を訪ねた。 仙人は太子を迎えて、深く敬って申し上げた。「諸々の仙人には威光がありません。そう…
釈迦 苦行に入る (2) ・ 今昔物語 ( 巻1-6 ) ( (1)より続く ) 太子は、迦蘭山の苦行の地に行かれた。憍陳如(キョウヂンニョ)等の五人の住処である。 そこより尼連禅河のほとりに行って、座禅修習して苦行をされた。或る日は一粒の麻の実を食し、或る日は…
釈迦と天魔 ・ 今昔物語巻 ( 1-6 ) 今は昔、 釈迦(まだ悟りを開かれる前なので、菩薩と記されている)は、菩提樹の下で思考された。 「過去の諸仏は、何を以って座具として無上道(ムジョウドウ・最高の悟り)を成就されたのであろうか」と思考され、「草を…
釈迦悟りを開く ・ 今昔物語 ( 巻1-7 ) 今は昔、 天魔が様々な手段を講じて、釈迦の成道(ジョウドウ・完全な悟りを得て仏と成ること)を妨げようとしたが、釈迦は芥子粒ほども惑わされることがなかった。慈悲の力を持って、見目麗しい天女の正体を見破り、…
釈迦と五人の比丘 ・ 今昔物語 ( 巻1-8 ) 今は昔、 釈迦如来は波羅奈国(ハラナコク・ガンジス川中流域にあった古代インドの一つの民族国家)に行かれて、憍陳如(キョウジンニョ・釈迦が出家した時、父王が随従させた五人の従者の筆頭。釈迦の最初の仏弟子…
舎利弗尊者 ・ 今昔物語 ( 巻1-9 ) 今は昔、 釈迦如来の御弟子舎利弗(シャリホツ)尊者は、もとは外道(ゲドウ・仏教徒以外の異教徒を指す)の子である。 その母が舎利弗を身籠った時、すでに腹の中で知恵があり、その知恵が母の腹を破って出てこようとした…
地獄に堕ちる ・ 今昔物語 ( 巻1-10 ) 今は昔、 提婆達多(ダイバダッタ)という人がいた。 この人は、釈迦仏の御父方の従父(イトコ・従弟)である。釈迦仏は浄飯王(ジョウボンオウ)の御子であり、提婆達多は浄飯王の弟の黒飯王(コクボンオウ)の子であ…
供養の果報 ・ 今昔物語 ( 巻1-11 ) 今は昔、 釈迦は婆羅門城(バラモン教徒が大勢住んでいる町)に入って乞食(コツジキ・修業の一つで、托鉢のようなもの)をされようとした。 すると、その町の外道(異教徒。ここではバラモン教徒)たちが皆心を一つにし…
毒を薬に変える ・ 今昔物語 ( 巻1-12 ) 今は昔、 天竺(テンジク・インドの古称。範囲については諸説あり)に外道(仏教徒からみた異教徒)がいた。名を勝蜜(ショウミツ)という。 彼は、釈迦を何とかして殺害せんと思い策を練ったが、思いついたことは、…
釈迦の出座 ・ 今昔物語 ( 巻1-13 ) 今は昔、 天竺に満財長者(マンザイチョウジャ)という人がいた。一人の男の子がいた。 須達長者(シュダツチョウジャ)という人がいた。一人の女の子がいた。 満財が須達の家に行ってみると、一人の女の子がいた。容姿端…
釈迦 婆羅門城に入る ・ 今昔物語 ( 巻1-14 ) 今は昔、 婆羅門城(バラモンジョウ・第十一話にも出てくる。城は、町そのものを指すことが多い)には、仏法というものがなく、皆外道(仏教から見た異教。ここでは婆羅門教か?)に帰依していてその経典を学ん…
釈迦 自然太子を救う・ 今昔物語 ( 巻1-15 ) 今は昔、 天竺に提何(ダイカ・人名)長者という人がいた。夫妻ともに年老いていた。そして、一人も子がなかった。 妻が言うには、「天界でも人間界でも、子がいる人が豊かな人としている。子のない人は、気の毒…
指を与える ・ 今昔物語 ( 1 - 16 ) 今は昔、 天竺にオウクツマラ(鴦掘魔羅)という人がいた。この人は、シマンビクという人の弟子である。(この二人は同一人物ともいう) 師匠から弟子へと、外道の法(仏教以外の異教の教え)を信じて、その教えを習った…
母の悲しみ ・ 今昔物語 ( 1 - 17 ) 今は昔、 釈迦如来は、「ラゴラ(羅睺羅・釈迦の実子で、十大弟子の一人)を呼び寄せて出家させよう」と思われて、モクレン(目連・はじめ外道であったが、同門の舎利弗と共に釈迦に帰依した。仏弟子の長老格で、神通第一…
地獄を見る ・ 今昔物語 ( 1 - 18 ) 今は昔、 釈迦仏の御弟にナンダ(難陀・釈迦の異母弟。容姿端麗で仏弟子中端正第一とされる)という人がいた。 まだ在家であった時、五天竺(ゴテンジク・古代インドを五分したもので、全インドを指す)の中で容姿端麗第一の…
最初の尼僧 ・ 今昔物語 ( 1 - 19 ) 今は昔、 キョウドンミという人は、釈迦仏の叔母に当たる。麻耶夫人(マヤブニン・釈迦の実母)の妹である。 仏(釈迦)が、カピラエ国(釈迦族の首都。幾つもの呼び方がある)においでになっていた時、キョウドンミが釈迦に…
ヤシュダラの出家(欠文) ・ 今昔物語 ( 1 - 20 ) 本話は、表題のみで全文が欠文となっている。 なお、ヤシュダラは、釈迦が出家する前の妃であり、ラゴラの生母である。 第十七話のラゴラが出家する場面で登場してきていて、彼女の出家に至る場面も興味深…
高弟たちの出家 ・ 今昔物語 ( 1 - 21 ) 今は昔、 釈迦仏の父である浄飯王(ジョウボンオウ)の弟に、コクボン王という人がいた。その王に二人の男の子がいた。兄の名前はマカナン、弟の名前はアナリツという。(釈迦の血脈については、伝承によって異同がある。…
出家の功徳 ・ 今昔物語 ( 1 - 22 ) 今は昔、 天竺(テンジク・古代インド)において、釈迦仏はアナン(高弟の一人)と共にビシャリ城(古代インドの十六大国の一つ)に入って乞食(コツジキ・托鉢)をなさいました時、場内に一人の王子がいた。名前をヒラセンナと…
財宝に勝る宝 (1) ・ 今昔物語 ( 1 - 23 ) 今は昔、 天竺に二つの城があった。一つは花子城(ケシジョウ・マガダ国マウリヤ王朝の首都)といい、もう一つは勝音城(ショウオンジョウ・西天竺のサウビーラ族の首都らしい)という。この二つの城は、それぞれ栄えたり衰え…
財宝に勝る宝 (2) ・ 今昔物語 ( 1 - 23 ) ( (1) より続く ) 使者は彼の国に至り、まず信書を王に差し上げた。 王は書を受け取ると開いて読み、たちまち怒りをあらわにして大臣に言った。「私は、未だあの国の善悪に対する考え方を知らぬ。どうしてこのよ…