2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧
運命紀行 南海の彼方に 元暦元年三月。南海の海は穏やかに晴れわたっていた。 空の色も、日の出直後の朱の色は消えて、海の色より薄い水色に白い雲がここかしこにかかっている。 早起きの漁師たちの小舟はすでにそれぞれの漁場に向かった後らしく、幾つかの…
運命紀行 君が袖振る 宴席は最高潮に達していた。 即位したばかりの天智天皇が数多の群臣を率いて、ここ蒲生野の御料地で行われた遊猟は壮大なものであった。 新天皇を取り巻く人々は意気軒昂に語り、歌い、かつ酔い痴れていた。 やがて、指名されたのか立ち…
運命紀行 雪原の戦い 降り続いていた雪は止んでいた。 東の空が微かな朱の色を生みだしていた。やがて、その色は、次第に広がりを見せ、空を水色に変えていきつつあった。千切られたような雲が北から南へ流れていたが、雪の気配はなかった。 軍勢は、すでに…
運命紀行 花も花なれ人も人なれ 戦乱の気配は高まっていた。 それは、留守を預かる細川屋敷にも伝わってきていたが、ついに正室に大坂城に入る旨の要請があった。 申し出は拒絶したが、それで穏便に収まるはずもなかった。 すでに屋敷は石田勢に囲まれている…
運命紀行 われこそは新島守よ 隠岐は絶海の孤島である。 都を追われ、伯耆の国でさえ地の果てまで行くのかと思われたが、さらに海上を行くこと十余里だとか・・・。 七月の日本海は、嵐さえなければ最も穏やかな季節といえる。 しかし、都の、それも禁裏の奥…