『 とうとう、あなたが翁丸贔屓であることが露見してしまいましたね 』
わたしは、御鏡を投げ出すようにして、翁丸に声をかけました。
翁丸は身を伏せて、応えるように激しく啼くのです。
中宮さまも、安心したかのように微笑んでいます。
帝も姿を見せられて、「犬でも、そのような神妙な気持ちを持っているのだなあ」と感心されていました。
わたしは、「はやく傷の手当てをさせなくては」などと翁丸の世話を始めますと、
「とうとう、あなたが翁丸贔屓であることが露見してしまいましたね」
と、女房たちが笑うのです。
☆ ☆ ☆
( 「麗しの枕草子物語」より )