枕草子 第四十五段 郎等は随身こそあめれ
郎等は、また、随身こそあめれ。いみじう美々しうてをかしき君達も、随身なきは、いとしらじらし。
弁などは、いとをかしき官に思ひたれど、下襲の裾短くて、随身のなきぞ、いとわろきや。
郎等(ヲノコ・召使の男)では、ともかく随身(朝廷から賜る護衛兵。官位によって人数が決められていた)が勝れているでしょう。たいそうきらびやかな服装で魅力的な貴公子でも、随身を連れていないのでは、とてもがっかりしてしまいます。
弁官(太政官の事務官僚で四位五位相当官、学識ある有能な人材が登用されていた)などは、たいへん魅力のある官職だと思っているのですが、下襲の裾が短くて、随身もいないので、たいそう見劣りしてしまいます。
随身は、上皇や上達部(カンダチメ・三位以上の上級貴族。参議の場合は四位でもこの中に入る)に付けられる警護の武官で、上皇には十四人、摂政・関白には十人、大臣・大将には八人、納言・参議には六人、など身分や官職により数が決められていました。
また、下襲の裾は、身分が高いほど長く、同格の武官に比べて弁官のものは短かったそうです。
四位五位の弁官となれば立派な貴族ですが、少納言さまのお気に召されるためには不足なようです。やはり、少納言以上となり随身を引き連れる身分にならないと駄目なのでしょうかねぇ。