今昔物語拾い読み ・ その3
今昔物語 巻十三 ご案内 巻十三は、全体の中の位置付けとしては、本朝付仏法にあたります。 主として法華経霊験譚といった内容で、全部で四十四話が掲載されています。 宗教として、あるいは現代の倫理などにはあまり拘らず、読み物として楽しみたいと思いま…
大峰山中の聖人 ・ 今昔物語 ( 13 - 1 ) 今は昔、 仏の道を修行して歩く僧がいた。名を義睿(ギエイ・出自不詳。薬師寺の僧に同名の人物がいるが別人らしい。)という。 諸々の山を廻り、海を渡り、諸国に行ってあちらこちらの霊場に参って、修行を積んでいた…
比良山の仙人 ・ 今昔物語 ( 13 - 2 ) 今は昔、 葛川という所に籠って修行する僧がいた。 穀物を断って山菜を食って、何か月も熱心に修行をしていたが、ある時、夢の中に気高い僧が現れて、「比良山の峰に仙人がおり、法華経を読誦している。お前は速やかに…
仙人となる ・ 今昔物語 ( 13 - 3 ) 今は昔、 陽勝(ヨウジョウ)という人がいた。能登国の人である。 俗称は紀氏。年十一歳にしてはじめて比叡山に登り、西塔の勝蓮花院(ショウレンゲイン)の空日律師(クウニチリッシ・出自等不詳)という人を師として、天台の教えを学び、…
愛欲に勝てず ・ 今昔物語 ( 13 - 4 ) 今は昔、 下野(シモツケ)の国に一人の僧がいた。名を法空(ホウクウ・出自等不詳)という。法隆寺に住んで顕教・密教の法文を学んでいた。また、法華経を受持(ジュジ・教えや戒律を受けてそれを守ること。)して、日ごとに三…
聖人の生き様 ・ 今昔物語 ( 13 - 5 ) 今は昔、 摂津国に慶日(キョウニチ・出自等不詳)という僧がいた。幼くして比叡山に登って出家し、顕教・密教の法文を学びいずれも十分習得し、外典(ゲデン・内典に対する語で、仏教経典以外の典籍。主に道教、儒教の書籍を…
閻魔王庁より蘇る ・ 今昔物語 ( 13 - 6 ) 今は昔、 摂津国の豊島郡(テシマノコオリ・大阪と兵庫の境辺り)に多々院(タダノイン)という所がある。その所に一人の僧が住んでいた。その僧は山林に入って仏道を修行していた。また、法華経を長年にわたり日夜読誦してい…
写経の功徳 ・ 今昔物語 ( 13 - 7 ) 今は昔、 比叡山の西塔に道栄(ドウエイ・出自等不詳)という僧が住んでいた。もとは、近江国[ 欠字あるも、不詳 ]の郡の人である。 幼くして比叡山に登り、出家して法華経を受持し日夜読誦して、十二年間を修行期間として…
怒りの心を諫める ・ 今昔物語 ( 13 - 8 ) 今は昔、 法性寺の尊勝院(京都にあった)の供僧(グソウ・供奉僧の略。供養や法会の寺務をする僧。)をしている道乗(ドウジョウ・出自等不詳)という僧がいた。比叡山の西塔の正算僧都(ショウザンソウツズ・のちに第十一代法…
舞い上がる経典 ・ 今昔物語 ( 13 - 9 ) 今は昔、 理満(リマン・出自等不詳)という法華の持者がいた。河内の国の人である。吉野山の日蔵(ニチゾウ・金峯山椿山寺の僧。一度死んでから蘇生したという伝説がある。)の弟子である。 仏道心を起こした初めの頃に、…
髑髏となるも経を誦す ・ 今昔物語 ( 13 - 10 ) 今は昔、 春朝(シュンチョウ・出自等不詳)という持経者がいた。日夜に法華経を読誦して、住処を定めずあちらこちらと流浪して、ひたすら法華経を読誦していた。 人を哀れむ心が深く、人が苦しむところを見ると自分…
願を果たす ・ 今昔物語 ( 13 - 11 ) 今は昔、 一叡(イチエイ・出自不詳)という持経者(ジキョウシャ・常に経典を所持し読誦信奉する者。特に法華経の信奉者を指す。)がいた。幼い時から、法華経を受持し、日夜に読誦して長年を経た。 そうした時、一叡は帰依する…
修行が無となる ・ 今昔物語 ( 13 - 12 ) 今は昔、 京の東山に長楽寺という寺があった。 そこに仏道修行をする僧がいた。花を摘んで仏に奉るために、山深く入って、峰々谷々を歩くうちに、日が暮れてしまった。そこで、とある樹木の下で野宿することにした。…
閻魔王の仰せを受ける ・ 今昔物語 ( 13 - 13 ) 今は昔、 出羽の国に竜花寺(リュウゲジ・所在不詳)という寺があった。その寺に妙達和尚(ミョウタツカショウ・伝不祥)という僧が住んでいた。その寺の住職であったようだ。生活態度は清らかで、心は正直であった。また…
法華経ひとすじ ・ 今昔物語 ( 13 - 14 ) 今は昔、 加賀の国に翁和尚(オキナカショウ・伝不祥)という者がいた。心が正直で、永く諂曲(テンゴク・自分の心をまげて、人にこびへつらうこと)と無縁であった。日夜、寝ても覚めても法華経を読誦して余念を抱くことがな…
兜率天に昇る ・ 今昔物語 ( 13 - 15 ) 今は昔、 東大寺に仁鏡(ニンキョウ・伝不祥)という僧がいた。その父母は、はじめ寺の近くに住んでいたが、子がいなかったので子を授かりたいと請い願って、その寺の鎮守(チンジュ・寺の境内に勧請した守護神。)に祈請して…
愚鈍なれど ・ 今昔物語 ( 13 - 16 ) 今は昔、 比叡山の東塔にある千手院という所に、光日(コウニチ・伝不祥)という僧が住んでいた。 幼くして比叡山に登り出家して、師について法華経を習おうとしたが、愚痴(グチ・本来は、「煩悩に惑わされて理非を悟らない…
毒蛇に襲われる ・ 今昔物語 ( 13 - 17 ) 今は昔、 雲浄(ウンジョウ・伝不祥)という持経者(ジキョウシャ・常に経を信奉し読誦する僧)がいた。若い時から長年にわたり、日夜に法華経を読誦し続けていた。 ある時、「諸国を廻って、あちらこちらの霊場を拝もう」と…
祈り続ける ・ 今昔物語 ( 13 - 18 ) 今は昔、 信濃の国に両目とも見えない僧がいた。名を妙昭(ミョウショウ・伝不祥)という。盲目(メシイ)ではあるが、日夜に法華経を読誦した。 さて、この妙昭が七月十五日(この日は夏安居が終わる日。四月十六日から三か月間…
瑞相が現れる ・ 今昔物語 ( 13 - 19 ) 今は昔、 平願(ビョウガン・伝不祥)持経者という僧がいた。書写山(ショシャヤマ・兵庫県)の性空(ショウクウ・・平安時代の僧。花山法王・和泉式部・藤原道長などと親交・帰依があった。)の弟子である。 聖人が亡くなった後も、…
むやみに罰してはならない ・ 今昔物語 ( 13 - 20 ) 今は昔、 石山寺(滋賀県大津市。観音霊場として著名。)に好尊(コウソン・伝不祥)聖人という僧がいた。若くして法華経を習い、日夜読誦していた。また、真言もよく学び、その行法(ギョウホウ・密教の修業)を…
不思議の数々 ・ 今昔物語 ( 13 - 21 ) 今は昔、 比叡の山に長円(チョウエン・伝不祥)という僧がいた。もとは、筑紫(ツクシ・筑前、筑後の両国。現在の福岡県。)の人である。幼くして生国を出て、比叡の山に登って出家して、法華経を習って、日夜読誦していた。 …
虻の子を育てる ・ 今昔物語 ( 13 - 22 ) 今は昔、 筑前の国に蓮照(レンショウ・伝不祥)という僧がいた。若い時から法華経を習っていた。昼夜に読誦して、他事に心を移すことがなかった。また、道心が深く、人を哀れむ心が広かった。 裸の人を見ると自分の衣を…
童子に護られる ・ 今昔物語 ( 13 - 23 ) 今は昔、 仏蓮(ブツレン・伝不詳)という聖人がいた。もとは安祥寺(アンショウジ・京都山科)の僧である。 幼い時から法華経を習って、昼夜に読誦して仏道を修行した。盛の年(サカリノトシ・壮年を指すか?)の頃に、越後の国古…
全国を行脚 ・ 今昔物語 ( 13 - 24 ) 今は昔、 世間で一宿の聖人と言われている僧がいた。名を行空(ギョウグウ・伝不祥)という。 若い時から法華経を習って、昼に六部、夜に六部、合わせて十二部誦することを欠かさなかった。出家した後、住所を定めず一所で…
長命を無病で ・ 今昔物語 ( 13 - 25 ) 今は昔、 周防の国大島の郡に基灯(キトウ・伝不詳)という聖人がいた。 若くして法華経を習い、日夜に読誦して身命を惜しまなかった。毎日、三十余部誦することを怠ることがなかった。 百四十余歳になっても、腰も曲がら…
前世の報いを覆す ・ 今昔物語 ( 13 - 26 ) 今は昔、 筑前の国にある府官(フカン・大宰府の官人)がいた。その妻は、にわかに両目が悪くなり、はっきりと見えなくなってしまった。そのため、女は常に涙を流して嘆き悲しむばかりであった。 ところが、ある時、…
権化と呼ばれた聖人 ・ 今昔物語 ( 13 - 27 ) 今は昔、 比叡の山に玄常(ゲンジョウ・伝不祥)という僧がいた。生れは京の人である。 幼くして比叡の山に登り、出家して師僧について仏道を習ったが、智恵が優れ広くその教義を習得した。また、法華経を習い受け…
白い蓮華 ・ 今昔物語 ( 13 - 28 ) 今は昔、 蓮長(レンチョウ・伝不詳)という僧がいた。桜井の長延聖人(伝不祥)の昔の修業仲間である。 若い時から法華経を習い、昼夜に読誦に勤め怠ることがなかった。また、金峰山(ミタケ)、熊野、長谷寺など諸々の霊験所に詣…
死してなお誦する ・ 今昔物語 ( 13 - 29 ) 今は昔、 比叡の山の西塔に明秀(ミョウジュ・伝不祥)という僧がいた。天台座主の暹賀僧都(センガソウズ・後に権僧正。第二十二代天台座主。)という人の弟子である。 幼くして山に登り出家して、師僧について法華経を習…